内容
山とそこにある自己をテーマにした水彩画 約25展を展示。
そのいずれもアーティストが実際に歩き、攀じ、震え、滑り、時間を過ごした登山活動をモチーフに、白神、岩手山、焼石岳、早池峰、栗駒山という北東北地方の山々からヒマラヤまでの四季折々に描かれた作品群で、展示会場を「北の山」の世界に仕立てています。
作家よりコメント
昨年3月。雪山登山中に雪庇を踏み抜き200m以上の転落で大腿骨をはじめとして全身の骨を折ったあげく、雪崩に流されました。
あの時、顔の上に降りしきる雪を払いのけることすらも出来ずに、ぢわぢわと冷たくなっていくだけだった命の実感。
再び歩けるようになるどころか生きて帰れるとは思えなかったのですが、
仲間の決死の活動の末無事救出していただき、度重なる手術と毎日のリハビリで4ヶ月後、杖をついての退院となりました。
その翌日に近所の裏山に登ってみました。
50代後半。入院生活で筋肉は激減。照りつける夏の太陽。たった60mの、山とも言えないような丘。
杖を突きながらの一歩一歩が激痛を呼び込み、全身を激しく鞭打ちます。
這うようにしてやっとたどり着いたところからは、見慣れた自分の住む町が見下ろせました。
刈りそびれた雑草に覆われ、朽ち果ててる展望台がある小さな頂上。
フラフラで肩で息をしながら、汗と涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして、ひとり慟哭と歓喜に包まれていました。
そしていま、ようやく、一年以上の延期をしたのち、今期の横浜展開催とする運びとなりました。
山にいると、どうしようもなく自分の肉体に取り込んでしまいたくなるような風情に出くわすことが、あります。
写真を撮ります。けど、その写真を家でいくら見返しても、どうしても違うのです。
つまり、もどかしい。
あの、ギリギリまで張り詰めた渓谷の中に揺らぐ透明感とか、ヒマラヤ巨峰群の圧倒的な威圧感、
と云うようなものが自分の中に激しく沈殿しまくり溢れ出て仕方が無いのです。
「その空間に自分は確かにいた」
その噎(む)せかえるような実感を、絵筆でどこまで表すことが出来るというのでしょうか。
もちろんその後も、変わらずに「北の山にいます」
作家略歴
1990~2000年 盛岡にてグループ展
2005年 アート@土澤 出展
2020年 台日國際藝術博覧会 彩華賞受賞 石井スポーツ盛岡店様にて常設展示
2021年 個展(盛岡)盛岡つなぎ温泉病院様にて 常設展示
2022年 雪山にて遭難(大腿部他全身骨折)3ヵ月を超す入院生活とその後のリハビリのため、
個展は延期、作家活動も休止。グループ展(盛岡)
2023年 岩手県雫石町のアウトドアショップ『徳風』様にて常設展示 グループ展(盛岡)
個展(横浜)個展(盛岡)
現在 東北(岩手)在住 画家・岳人として活動中